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日本酒イノベーション_月桂冠の取り組み

現在人気投票等の日本酒ランキングで上位を占める多くは、個性ある中小規模酒蔵の地酒です。吟醸、生酛等手のかかる製法で醸された特定名称酒は小規模の蔵が丁寧に小ロットで醸し、普通酒を中心とした普及品は大手酒造メーカーが工場で大量に生産し全国で販売する、というのが一般に定着したイメージではないでしょうか。

それぞれの役割を意識した棲み分けがなされているということもあるでしょうが、大手蔵が品質向上に無関心なわけではありません。高い技術力と豊富な資金力をもった大手蔵だからこそ可能な品質向上の取り組みもあります。今回は業界最大手の一角を占める月桂冠の取り組み、「Gekkeikan Studio」をご紹介します。

京都・伏見の老舗月桂冠は、業界初の酒造研究所を創設したほど醸造技術の革新に熱心な蔵です。その月桂冠が進めるプロジェクト「Gekkeikan Studio」は、研究開発により実験的に生み出された斬新な日本酒を試作段階で顧客に提供し、そのフィードバックを反映して新たな日本酒を生み出そうという試みです。製造数量や販路を限定することで、開発期間短縮、品質設計の自由度を上げ、短いサイクルで実験を繰り返す、日本酒のイノベーションとも言うべき取り組みです。

月桂冠
[Gekkeikan Studio no.3]

プロジェクトは昨年2021年11月にクラウドファンディングのMakuake*を活用してスタートし、2022年10月現在までに以下3つの試作品を発表しています。各商品の概要は月桂冠の紹介文からの引用です。興味のある方は試してみてはいかがでしょうか。月桂冠のオンラインショップで販売中(2022年10月27日現在)です。 <https://www.gekkeikan-shop.jp/>

 

第一弾商品「Gekkeikan Studio no.1」

メロンの果肉を感じさせるみずみずしい味わいと、なめらかな口当たりが特長。酵母に関する長年の研究開発の成果。

 

第二弾商品「Gekkeikan Studio no.2」

桃やプラムを漬け込んだシロップのような香りと味わい、とろりとした濃密な舌ざわりが特長。研究員のひらめきとアイデアで、とろみ成分をびんの中に詰め込むことに成功。

 

第三弾商品「Gekkeikan Studio no.3」

パイナップルを思わせるトロピカルなテイストと、飲む温度によって香りと味わいが大きく変わるのが特長。独自の自社酵母を使用すると共に、少量の仕込みを何度も繰り返すことで香りと甘味、酸味の微妙なバランスを実現。

私は、「温度によって香りと味わいが変化する」という第3弾商品を試飲してみました。以下個人的な感想です。

パイナップル様のさわやかで甘酸っぱい香りとヨーグルトのようなまろやかな口当たりが特長。温度が上がるほどパイナップルのさわやかな香りは失せるが、まろやかさはアップする。

 

まろやかさが際立つ40℃近辺も捨てがたいですが、香りとまろやかさのバランスがとれた23℃~27℃あたりが私の好みです。

「酒を科学する」、「日本酒業界の技術革新をリードする」という創業からの理念を体現する月桂冠。その研究開発とマーケティング部門が一体となった取り組みをご紹介しました。大手企業の総合力を生かした全く新しい技術開発への期待が、いやが上にも高まります。今後の日本酒の進化が楽しみです。

*企業などがネットを通じて、支援者に製品の開発費用などを募るクラウドファンディングで、「アタラシイものや体験の応援購入サービス」を標榜。大手企業の活用も増えており、新たな消費の形としても定着している。サイバーエージェントの子会社が運営。

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