⒗ニューヨーク到着

 

手足が痺れる感覚で目が覚めた。見るとフリーウエイの路肩にバスが止まっている。バスが故障したので代わりのバスが来るのを待っていると、隣の席の男性が教えてくれた。暖房も停止しているようで凍える程の寒さだ。手足の痺れは寒さのためだったようだ。時計を見ると、朝の5時。

 

すっかり目が覚めた僕に、どこから来たのかと隣の男性が話しかけてきた。30代半ばぐらいだろうか、カジュアルではあるがきちんとした身なりの白人だ。日本から来てアメリカ一週旅行をしていると言うと、ボストンには行ったか、ボストンは非常に美しい町なので是非行くべきだ、と薦めてくれた。ボストンの話や旅の話で盛り上がり、僕らはすっかり意気投合した。そして、僕がいかにも貧乏旅行の学生に見えたのであろう(本当にそうなのだが)、「自分はボストンに住んでいる。家には寝室が5つあるので、ボストンに来たら遠慮せず泊まってくれ」と言い連絡先をくれた。

 

こちらに来て何人ものアメリカ人に、家に泊まりに来いと誘ってもらった。初対面の人間をこうも気安く自宅に招待するなんて、日本ではちょっと考えにくいことだ。よほど親切でオープンなのか。それとも恵まれた住環境の故なのか。日本も住宅事情がもう少しよければこうなるのだろうか・・・

 

30分ほどして代わりのバスが来た。乗客はみんな順序良く乗り換え、新しいバスでもそれぞれ全く同じ席に座った。アメリカ人もこういうところはちゃんとしてるんだなと思うと親近感がわいた。

 

マンハッタンに入るとバスは摩天楼の間を縫うように進んだ。ビルに日の光が遮られて道が薄暗い。思わずバスの窓から巨大なビル群を見上げた。やっぱりニューヨークはすげぇなー。バスは約1時間遅れで朝10時半にミッドタウンのデポに着いた。ロサンゼルス以上に巨大で、沢山のバスが行き来しており、多くの乗客でごった返していた。外は高いビルが建ち並ぶ、映画やテレビで見るまさにあのニューヨークだった。クリスマスシーズンを迎えた街は活気があり、エネルギーに溢れているように見えた。