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宮内庁楽部 雅楽演奏会

宮内庁楽部 雅楽演奏会

週末、皇居東御苑の奥にある宮内庁式部職楽部で開かれた「雅楽演奏会」に行ってきました。この日は高円宮久子様がご臨席。会場全体が一層引き締まり、厳かで特別な空気に包まれていました。

 

雅楽は、日本に伝わる最古の音楽芸能であり、千年以上にわたって宮中の儀式や行事とともに受け継がれてきた伝統です。宮内庁式部職楽部の楽士による雅楽は「国の重要無形文化財」に指定されており、楽士全員がその保持者。つまり、一人ひとりが“人間国宝”にあたる存在です。その演奏は、まさに国家の歴史と精神が息づく瞬間そのものでした。

宮内庁楽部 雅楽演奏会

会場の空気

会場に足を踏み入れると、まず目を引くのは朱塗りの欄干と、金箔を施した二つの飾太鼓。高い天井から自然光が差し込み、やわらかな明るさの中に厳粛な空気が漂っています。観客席はすでに満席で、静かに開演を待つ人々の姿からも、この演奏会の貴重さが伝わってきます。

 

やがて、笙(しょう)の音が調律のためにそっと鳴らされると、空気がふっと変わりました。ゆらぐような和音が会場を包み込み、まるで時間がゆっくりと遡っていくようです。

宮内庁楽部 雅楽演奏会

【国風歌舞】久米舞(くめまい)

最初の演目は、日本古来の舞「国風歌舞」から《久米舞》。古代の久米部と呼ばれる兵士たちが、戦勝を祈って舞ったと伝えられる勇壮な舞です。

 

舞人たちは白い装束に浅葱色の袴をまとい、ゆったりとした動作で舞い始めます。

一見静かに見えますが、その一歩一歩には確かな力強さがあり、扇を高く掲げる所作には凛とした気迫が宿ります。

笛と太鼓が重なり合うたびに、古代の武の精神と祈りの心が浮かび上がり、会場全体が厳かな空気に包まれます。

【舞楽】甘州(かんしゅう)

続いては、唐代中国に起源をもつ左方の舞《甘州》。紅を基調とした衣をまとった舞人たちが、ゆるやかな四拍子に乗せて登場します。

 

動きは優雅で、どこか異国の香りを漂わせながらも、全体には日本的な静けさと品格が感じられます。 笙と篳篥(ひちりき)が織りなす音の重なりが絶妙で、まるで音楽そのものが舞を導いているかのようです。

【舞楽】貴徳急(きとくのきゅう)

三曲目の《貴徳急》は、一転して軽快なリズムが印象的な舞。

青と朱の装束をまとった舞人たちが左右に分かれ、すばやく進み、また引き、音と動きが見事に呼応します。

太鼓が鋭く響き、笛が高らかに鳴るたびに、舞台に緊張と活気が走りました。

 

終盤に向けてリズムが高まると、観客の呼吸も自然と速くなるよう。

雅楽というと静かな印象を持たれがちですが、この舞は生命力と躍動感に満ちていました。

【舞楽】陪臚(ばいろ)

最後を飾ったのは、雅楽を代表する右方の舞《陪臚》。唐の宮廷儀礼に由来し、平安時代から朝賀などの式典に欠かせない壮麗な曲です。金襴の冠に緋と萌黄色の衣をまとった舞人が登場し、静かに舞台中央へ進む姿はまさに王朝絵巻のよう。

 

左右対称に構成された舞の流れは整然としており、ひとつひとつの所作が音楽と見事に調和していました。終盤、舞人たちが一斉に扇を広げ、太鼓が高らかに響くと、空間全体が震えるような迫力です。

千年の響きに包まれて

演奏が終わると、しばしの沈黙ののちに静かな拍手が湧き起こりました。

それは称賛というよりも、深い敬意と感謝の拍手。

 

高円宮久子様がご退席される際、観客全員が深く頭を下げ、誰もが「美しい時間を共有できた」ことを心に感じていたように思います。

 

雅楽は、千年の時を超えて今も生き続ける日本の宝。宮内庁楽部の楽士たちは、その尊い伝統を日々の研鑽によって守り、未来へと手渡しています。この演奏会は、その重みと尊さを肌で感じる、かけがえのない体験となりました。

 

現代の忙しさの中で、こんなにも静かで深い時間に身を置けること――

それ自体が、心の贅沢なのかもしれません。

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